ミドサーDINKS妻のQOL向上計画

30代のほうが20代より楽しいってほんと?を検証する

団信に落ちた先天性心疾患(身体障害者手帳1級)持ちが都心にマンションを買った話

元々「いつかは書こう」と思いながら伸ばし伸ばしになっていたネタです。

先日お問い合わせをいただいたので、その時に書かせていただいたお返事をベースに、

  • 先天性心疾患持ち(機械弁使用中)
  • 身体障害者手帳1級持ち
  • 年収は"都内"同世代平均くらいの総合職
  • DINKS

であるわたしが都心にマンションを買った経緯について書いていきたいと思います。

注意:
わたしがマンションを購入した当時と今とでは色々な仕組み等が変更されている可能性があります。
あくまでも一つの体験談として参考程度にお読みいただき、最新の法律やルール等は別途各自でご確認ください。


まず前提として、我が家は

  • マンション購入の負担は50:50
  • マンションの名義も50:50
  • 収入合算ではなくペアローン

としています。

収入合算とペアローンの違いは下記などをご参照ください。

www.shinseibank.com


それぞれにメリット・デメリットがあるので、ご自分に合った借り方がどれかをパートナーの方と納得行くまで話し合っていただくのが良いかと思います。
ペアローンで良く言われるのは「離婚する時大変だよ」です。笑

また、夫は肺気胸の既往歴はあるものの、基本的に健康優良児であり、住宅ローンを組むにあたって大きな懸念はありませんでした。
あるとすれば、当時は彼が転職してまだ1年と職歴が浅かったことくらいでした。

マンションを買おうと考えたきっかけ

独身時代から新婚時代にかけては23区内の某私鉄沿線に住んでいました。
結婚するタイミングでわたしが同じ駅の徒歩5分圏内の範囲でワンルームから2DKに引っ越し、夫は結婚資金を貯めるために一時的に戻っていた実家から県境を超えて2DKに引っ越してきた、ただし一人暮らし時代に買った家具家電もある程度持ち込みで、といった感じです。
ダブった家電は知り合いに譲ったりしました。

新婚時代に住んでいた2DKが築浅で、かつ住宅供給公社の物件でスペックの割に共益費が安かったこともあって気に入って住んでいたのですが、ある日夫が言いました。

「もう通勤電車ほんと無理」

そうです、あの通勤地獄です。

無理なのは分かります。毎朝殺らなきゃ殺られる世界。
躊躇していていては永遠に電車に乗れず、会社にもたどり着けない世界。
無理に身体をねじ込めば、他人の汗で自分の服がしっとりし、酸欠になるかと思われる30分。
…まぁ30分で済むんだからだいぶマシな方ではあります。
でも健常者の夫すらやられる朝の通勤電車に、わたしの体力が毎朝相当削られていたのも事実でした。

わたしは当時住んでいた駅周辺を気に入ってはいたものの、引っ越し自体に異論はありませんでした。
その代わり出した条件が

  • ○○駅近辺は嫌だ
    (会社の人がたくさん住んでいるので休みの日に会いそう。会うこと自体はまだいいが、せっかくの休みにおちおちすっぴんジャージで出歩けないのは嫌だ)
  • ○○線沿線は嫌だ
    (お高く止まってそうで、雑多な某JR沿線で育ったわたしとは水が合わない)
  • 絶対に駅から徒歩5分以内
    (雨の日も雪の日も台風の日も猛暑の日も駅から家まで更に時間かかるのは意味不明)

の3点でした。

候補物件の絞り込み

はじめからマンション購入を念頭に置いていたわけではありませんでした。
が、

  • そもそもの予算
  • どの路線の沿線にするか
  • 何区に住むか

などを話し合って、だいたいこのへんかな、とあたりをつけたところでちょうど販売中になっていたのが、まさに今住んでいるマンションでした。

近辺の物件の中古販売価格も見ましたが、同程度の広さで、築30年でもある程度リノベしてあれば半額くらいでは売れそうに見えました。
新築マンションがあまり出てこない土地柄のようだし、今をときめくキラキラ系の地域でもないので、良くも悪くも地価が乱高下しなさそうな印象です。
仮に30年住んで半額で売れるのであれば、その半額を12ヶ月×30年=360ヶ月で割った額が今の家賃より安ければ買いだし、そもそも購入を検討しはじめた当時から、新築物件の価格が下がると言われるオリンピックが終わるまでの10年弱、賃貸でお金を払い続けても、そのお金って何にもならないよね?だったら今買うでしょ!といったところも夫婦で意見が一致しました。
※賃貸派vs持ち家派で意見を戦わせたいわけではなく、あくまで夫婦で意見が一致したという点について記録している次第です

念の為同じ区内で売り出していた他のマンションも見に行ったりしたのですが、そもそも新築マンションの供給量が少ない土地柄であったり、背伸びして住もうとしている地区なために販売中の他のマンションそのものがハイブランドすぎてとても手が届かなかったりと、他の有力候補はなかなか現れませんでした。
(ちなみにそのハイブラマンションのデベの営業のおじさまからは「うちじゃなくてもいいから今買ったほうがいいですよ」とアドバイスいただきました…おかげでしっかりちゃっかりマンション買えました…その節はありがとうございました…)

もしかしたら他の方々はもっとたくさんたくさん物件を見て回っているのかもしれないのですが、夫婦とも
「もうここで良くない?治安もいいし、通勤も楽だし、後から経済的に困ることがあってもここならそれなりの価格で売れるだろうし、日当たりと景観は良くないけど、全部が理想通りの物件なんてうちらの年収じゃ買えないよ」
と意見が一致して、最初に見たマンションを買うことに決めました。

マンション購入ありきで物件を探したわけではなく、引っ越し先を探した結果マンション購入に至った、という完全にノリと勢いと流れによるものだったため、当時ほぼ貯金がなかったこともあり、無理矢理お金をかき集め、それなりに節制をした上で、物件価格の5%だけの頭金でデベロッパーには許してもらいました。

ちなみにわたしは何千万円もの住宅ローンを組むことに対して「結婚より重大な決断をしている」という感覚だったのですが、その点だけは夫と最後まで相容れませんでした。笑

で、どうやってローン組もうか?

日頃のわたしを見てくださっている方はお分かりかもしれませんが、とにかくわたしは「養われる」ことに対してとてつもない抵抗感を持っています。
マンション購入に関しても、「絶対に名義は折半じゃないと嫌!そのためなら同額出す!」と考えていました。
まぁ夫も「働いてるんだからあなたも出すでしょ」と思っていたでしょう。

もう一つ心に決めていたのが「親の援助は受けない」でした。
結果的にわたし個人が実親から50万円ほど借りたりはしたのですが、次のボーナスですぐ返済しましたし、とにかく親といえど人に対して借りを作りたくありませんでした。
友人がパートナーのご両親にマンションの頭金を出してもらって、結果的にパートナーのご両親に対して頭が上がらなくなったのを見ていたからです。

わたしの勤務先では提携している金融機関があり、そこのフラット35でローンを組めばある程度の額までは金利の一部を勤務先が補助してくれるという仕組みがあります。
当時は固定金利でもそれなりに低い金利で住宅ローンを組めたこともあり(そのあと更に金利が下がりましたが…)、わたしはこれを使う気まんまんで、あまり他の選択肢を視野に入れていませんでした。

そんなこと言っても団信はどうすんの?

住宅ローンを組む際に問題として出てくるのが
「団信(団体信用生命保険)に加入できるかどうか」
です。

団信というのは、ローン債務者が亡くなったり病気になったりするとローンの残額がチャラになる、いわゆる住宅ローンに特化した生保です。
結婚を機ににいくつか保険に加入した時の経緯から、わたしはおそらく団信に落ちるだろうという予感がありました。

一応、住宅ローンを借りる先の金融機関で団信の審査を受けましたが、やはり審査には落ちてしまいました。
わたしの場合、ローン自体の審査は
「年収もそこそこ」
「勤続年数もそこそこ」
「何より勤務先の信用度が圧倒的に高い」
よって
「借りられるローンの上限額が(当時既にわたしより若干年収の高かった)夫よりも1,000万円も高い」
という圧倒的結果だったにも関わらず、それでも生保に加入することは難しいのです。

なんでや、稼いでるやん。正社員で。こんだけ太い会社で。
でもだめなんです。
それだけわたしの身体というのは、社会的信用度が低いんですね。

となると、「そもそも団信なしで住宅ローンを組むことはありなのか」が次に出てくる課題です。

一般的には、住宅ローンを組む際に団信への加入が義務付けられており、不可避のものとなっています。
でもわたし団信落ちましたやん。どうしろっちゅーねん。

大丈夫です、フラット35なら団信への加入は必須ではありません。
義務付けられていないのです。

finance.recruit.co.jpdummy

団信なしで住宅ローンを組む!?

フラット35なら団信に落ちても住宅ローンを組めることまでは分かりました。
が、さすがに何千万円もの借金をするのに何の保証もないのは怖すぎます。
特に今回は、夫婦ともに割と背伸びをして物件を買うため、わたしの身に何かあった時に夫一人で二人分のローンを返済していくのはさすがに金銭的に厳しくなることが予想されました。

当時はマンションのデベロッパーが「FP相談会」なるものを開催しており、そこで紹介されたFPさんからマンション購入額と想定される今後の年収に合わせた返済プランのシミュレーション等をしていただいていました。
(たとえば検討中の部屋より1,000万円高い部屋を買うと毎日もやし炒めしか食べられませんよ!海外旅行も行けませんよ!等と脅されて、今住んでいる部屋に決めたりしました。笑)

そこで、そのFPさんに「これこれの理由で団信に落ちたがその代わりに入れるような生保はあるか」をご相談をしたところ、「再保険」という形で生保を契約することを提案されました。

再保険というのは保険会社が"再保険会社"に対して更に保険金をかけてリスクヘッジをすることで、その分こちらが負担する掛け金は高くなりますが、わたしのようにリスクのある身体の人間でも健常者の方達と同じ生保の契約が可能になります。
当時はそのFPさんに全てのコーディネートをお願いしており、どうやったらこの契約形態が取れるのかはわたし自身はあまり詳しくないので、「団信に落ちたけど家を買いたい!」という方がいらっしゃったら、デベロッパーやハウスメーカーさんなどで生保を取り扱えるFPさんや保険会社の窓口を紹介いただけないかご相談してみるのが良いかなと思います。 

わたしは結果的に、この再保険の仕組みを使ってとある保険会社の積立型の生保を契約することが出来ました。
積立型なので最終的にお金も返ってきますし、いざとなれば住宅ローンの契約額と同額の保険金が夫に振り込まれるため、夫側に金銭的なリスクがなくなります。
(団信と違い、その時点での住宅ローンの残高がチャラになるわけではなく、住宅ローンの契約額と同額が保証されているため、後になればなるほど夫に得)

夫の住宅ローン、どうする?

ペアローンで片方がフラット35を借りると、おそらくもう片方がローンを契約できる先が限られてくることが想定されます。
例えばわたしの場合は、夫が一般的な銀行ではローンを組めなくなってしまい、信託銀行でローンを組んでいます。
これは、もし我々がローン返済ができなくなった時に家を差し押さえる権利(抵当権)の第一順位にフラット35の契約先がなってしまい、第二位になることを銀行が拒否するためです。
たとえばauじぶん銀行も、「自分が抵当権の第一順位じゃなきゃだめ!」と言っています。

www.jibunbank.co.jp


もちろん、夫婦ともに同じところで住宅ローンを組めば抵当権に順位がつかなくなるため、この問題は起きないと思います。
とはいえ、変動金利の方が金利が安い可能性が高かった、夫は勤務先から金利の補助を受ける等の福利厚生がないため、フラット35にする必要性が低い、等の色々な理由で夫はわたしと同じフラット35ではなく信託銀行で変動金利で住宅ローンを組みました。

当然、という言い方はしたくないですが、夫はすんなり団信の審査に通っています。

わたし側に勤務先から金利の補助があることから、住宅ローンの借入額はわたしの方を少し多めにし、代わりに頭金を夫が多めに出すことで、二人の出すお金をトータルでほぼイコールにしています。

そもそもこのやり方が正しいのか?

日本では夫婦でほぼ同額を稼ぐケースがまだまだ少ないこともあり、住宅ローンは夫となる人の名義で組むことが多いのかなと想像しています。
あるいは収入合算で妻側もお金を出すけれど、名義は夫ひとり、とかですね。
ただし、わたしはそのような一般的な流れには絶対に抗いたくて、今まで書いてきたような半ば強引な手法で個人的に生保に加入し、住宅ローンを組み、マンションの名義も半分持っています。
わたしは可能な限り男女平等な夫婦でありたいし、その権利を主張する代わりに義務と責任もきちんと負いたいのです。

でも、例えば、我が家と違って夫となる人の側がリスクのある身体だったら?
その場合、住宅ローンを組もうが組まなかろうが、そもそも「夫が一家の大黒柱となる」ことに対して疑問を持ってはどうだろうか?と思うのです。

男だから女だからじゃなくて、「健康な身体を持った方が一家の大黒柱となり、ちょっとリスクのある側がメインで家のことをする」という役割分担があってもいいじゃない、と思ったりするのです。
と言いつつ、じゃあわたしがちゃんと主婦業をしているかと問われると家事はほぼ夫に任せきりなので、偉そうなことは言えないのですが。

それに、うちの夫はそれこそ今は健康そのものですが、いつ病気や怪我をしてわたしと立場が入れ替わるか分かりません。
もしかしたら「わたしの方が健康、元気」という状況になることもあり得るのです。

そのようなことも考えると、世の中には色々なカップルの形があれど、そしてマンションを買おうが買うまいが、「いざとなればわたしが夫を支える」という気持ちを持ち続けながら働き続ける一択というのが、わたしの人生における正解だと思っている今日この頃でした。


いただいていたお問い合わせへのお返事をベースに、と書きながら、それ以外のことも一気にだーっと書き散らしてしまったので、読んでいてご不明な点などございましたらDMいただければ幸いです。