ミドサーDINKS妻のQOL向上計画

30代のほうが20代より楽しいってほんと?を検証する

コロナでも心内膜炎でもなく白血病だった件

ちょうど去年の今頃、こんなエントリを書いた。

 
 

結果的には今回のエントリのタイトル通り、コロナでも感染性心内膜炎でもなく白血病でした。
まじで油断ならねぇ我が人生。

 

 

 

2021年5月26日

前回のエントリの後、2021年5月26日には元々予定していた循環器の受診があった。

 
 
 
 
 
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血液検査の結果、

  • CRPも白血球も正常値なので、感染はおさまったと思われる
  • 血液培養の結果も問題なし、心内膜炎ではない
  • 今回は細菌ではなくウイルスによる感染症だったけれど、何のウイルス特定かするまでは至っていない(例えば、とあるウイルスに罹るとCRPに加えて肝機能の値も悪くなるといった特徴があるけれど、今回そのような特徴のある結果ではなかったのでウイルスの特定はできない)
  • 日常生活には戻ってOK
  • 単球の値がまだ高いのが気になる
  • 貧血も酷い(ヘモグロビン一桁)

ということを言われた。

  • 2〜3週間後にまた血液検査してみて、それでも値が正常値でなかったら血液内科に行くこと

  • 朝11時までなら当日でも血液内科の初診を受けられるから、10時までに血液検査の結果が出せるように朝早く来ること

  • PT-INRは正常値なので、体重が減った分前回より少しワーファリンの量が減ったけれど減らしたままにすること

を主治医と決め、一旦日常生活に戻った。
パーソナルトレーニングも再開し、仕事もこなしていたが、以下のような症状が時折出るようになった。

  • (特に荷物の多い時に)すぐ息切れする

  • 長距離を歩くのがしんどい

  • 口角炎から出血する

発熱時に10日間も寝込んでおり、食欲もなかったため3キロ痩せてしまっていたこと、また、その時の「しんどさ具合」が「子供の頃に開胸手術を受けた後の体力の落ち込んだ時期に似ていた」ことから、
「3キロも筋肉が減ったから歩くのがしんどくなってしまったんだ」
「ワーファリンがまだ効きすぎているのかも」
などと思いながら、3週間を過ごした。

今になってみて思えば、この時には既に白血病を発症していたのだと思う。
すぐに息切れするのも、しんどいのも、血中にヘモグロビンがまともに存在しなかったからだ。

金曜に受診したクリニックから電話があり、血液検査の結果(Mono、Meta、Myeloの数値)を踏まえると血液内科にかかった方が良いのではないかと言われる。
(え、血液内科…?白血病とかかもしれんってことか…?)
紹介状を書いてあげるからちゃんとした血液内科に行きなさいと言われ、夫に紹介状を取りに行ってもらう。

"コロナ禍で感染性心内膜炎疑いになるとまじでしんどい"

もし在宅勤務でなかったら、そしてコロナ禍でなく休日に出歩くようなライフスタイルだったら、もっと体調の悪化を実感していたと思う。

2021年6月16日

前回の循環器受診から3週間、何事もなくいつものように受診を終え、午後からは仕事に戻る気で病院に行った。
実はこの日の午後には異動の内示を受ける予定もあり、頭の中は仕事のことでいっぱいだった。

循環器から血液内科に回される

ところが採血を終えて主治医の待つ診察室に入ると、いつもはさっぱりとした主治医が何とも言えない顔をしていた。
「かきざきさん、血液内科行きましょうか」
「え、それって、検査の値が悪いってことですか」
「そうです、この値はちょっとおかしい」
といったような会話をした。

実はこの前夜、夫がクーラーをつけっぱなしで寝たため寝ている間にクーラーの風が直撃し、わたしは喉の痛みをおぼえていた。
病院の待合室で更にクーラーに当たり、寒気のあまり履いていた靴を脱いで椅子の上で胡座をかいて足先を温めていた。
ただ、これも今になって思えば、クーラーが原因なのではなく、白血病が進んでいたため正常な白血球が減少しており空気中の常在菌に感染して炎症を起こしていたのだろうと思う。

「ほんとはダメなのにわたし黙って入ってきちゃったけど、わたし今きっと風邪引いてるんです。喉が痛いんですよ。それをもってしても単球?とかの値は変なんですか?」
「いやもうそういうレベルを超えて変です、今から血液内科につなぎますね。たぶん入院して検査とかになるんじゃないかな」
「入院ってどのくらいなんでしょう(仕事…)」
「それは血液内科の先生に聞いてみないと分からないですね」

結局、わたしの血は血液内科の先生に顕微鏡で詳しく検査されることになった。
待っている間、「帰りに耳鼻科に寄ろう」なんて考えていた。

病気の発覚

2時間後、血液内科の診察室に呼ばれて入って言われたことは
「詳しい検査が必要ですが、ほぼ白血病で間違いないでしょう」
「無菌室を空けたので明日から入院してください」
「入院は半年から1年かかると思ってください」
「見つかるのがあと1週間遅かったら危なかったですよ、早めに分かって良かったですね」
だった。

「あの、仕事があるんでせめて1週間後からの入院とかにできませんか」
と言ってみたが、
「何言ってんだこいつ」
みたいな顔をされた。
でも今なら分かる、血液疾患はどれだけ早期に見つけ、治療を始められるかが鍵なのだ。

そしてそのまま処置室で「詳しい検査」ことマルク(骨髄検査)を受けた。


この後も何度かにわたってマルクを受けることになるが、この初回が一番痛かった。というのも、既に骨髄内に白血病細胞が溢れていたかららしい。

白血病とその治療について

白血病は大きく4つに分けられる。
急性骨髄性白血病慢性骨髄性白血病急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病だ。
わたしはその中でも「急性骨髄性白血病」なのだと告げられた。

白血病は、骨髄の中で白血病細胞が増殖し、正常な血球が造られなくなってしまう、血液のがんだ。
原因は不明。突然変異的に発症すると説明された。
年間の発症率は10万人あたり5〜6人と言われる、知名度の割にレアな病気だ。
生まれつき心臓も悪いのに、こんなSSRまで引き当ててしまうなんて、わたしの人生どれだけドラマチックになれば気が済むんだろう。宝くじでも買っておけば良かった。

血液のがんは、他のがんのように切って取り除くことが出来ない。主に抗がん剤での治療になる。
抗がん剤なんて、髪の毛が抜ける、くらいの知識しかない。

抗がん剤は1週間ほどの投薬と3〜4週間ほどの休薬を合わせて1クールとする。
最初の1クールは「寛解導入療法」と呼ばれ、ここで白血病細胞がおさまってくれれば、次の「地固め療法」のクールに入り、更に念入りに白血病細胞を叩きに行く。
1クールでだいたい1ヶ月を要し、通常は地固め療法も抗がん剤の種類を変えながら3〜4クール行うため、最低でも半年は入院となる。
クールの合間には数日間、一時帰宅が出来る。
場合によっては骨髄移植や臍帯血移植といった「造血幹細胞移植」を行うこともあり、その場合は入院期間はもっと伸びる。
入院期間が長いから、病室にパソコンを持ち込んで仕事をする人もいるし、過去にはギターを持ち込んだ人もいましたよと先生に言われた。

成人先天性心疾患+白血病のコンボだドン!

循環器の主治医は
「先天性心疾患の人が大人になるケースも増えて、加齢とともにこうやってがんになる人も増えてきています。その治療の時に、治療に心臓が耐えられるのかが成人先天性心疾患の課題なんですよ」
と言っていた。
わたしの心臓は白血病の治療に耐えられるのだろうか?

白血病と言えばセカチューだ。観たことはないけど。
わたしもセカチューのヒロインのように死ぬのだろうか?観たことないけど。
いやいや。
病気の種類はちょっと違うけれど、池江璃花子選手がいるじゃないか。彼女のように復活する人もいるんだ。
仕事もまさにこれからというところでキャリアに足止めがかかってしまうことがただひたすらに悔しいけれど、生き残るのが先だ。
一瞬で色々なことを考えた。

夫とのやり取り 夫は普通に仕事中なので「早よ既読付けろや」と思っていた 「★さん」はわたしの上司のこと


あまり現実感のないまま、入院前PCR検査の受付をし、その待ち時間に上司に電話をかけた。
「すみません急に。あの、元々先月発熱した時に血液検査の値にちょっと懸念が残ってるって話したの覚えてらっしゃいます?」
「うん覚えてるよ」
「なんか、それで明日から入院しろって言われちゃって」
「まじで」
「なんかぁ、白血病らしいんですよぉ」
(上司絶句)
「仕事のこととか色々ちょっとご相談させていただかないといけなくなっちゃいました」
「…分かった、とにかく仕事とか会社のことは気にしなくていいから。こっちからもまた連絡するし、何かあったらすぐ連絡して。旦那さんとやりとりした方が良かったらそうするし」
このバチくそ男前な上司に、この先の入院生活では何度も精神的に救われることになった。

そして、入院前PCR検査の際に測った体温は既に38度を超えていた。

入院用の買い出し

幸か不幸か、今まで1ヶ月くらいの入院なら何度もしたことはある。けれど入院自体久しぶりだし、半年間の入院なんて想像もつかなかった。
この時に参考にさせていただいたのが、奇しくも白血病で亡くなったばかりの山口雄也さんのこのエントリだった。


夫に仕事を全部ほっぽり出して病院に来てもらい、入院手続きの待ち時間に一緒にこのエントリを読んだ。

病院帰りに買ったものは、

  • 前開きのパジャマ(普段大学部活のTシャツで寝てる女なので)

  • 綿の下着

  • 靴下

  • 室内履き(昔はスリッパで良かったが、今はかかとが覆われていないとNG)

  • 生理用品

  • ワイヤーロック(小さいスーツケースに貴重品を入れて鍵をかけ、ベッドにくくりつけるため)

  • お風呂に入らなくてもこれで体を拭けばオッケー!なやつ

  • 洗い流さないシャンプー

  • 汗拭きシート

  • メイク落としシート

  • 体を洗うスポンジ

  • 湿布、休足時間、ロイヒ

  • ボディローション

  • ハンドクリーム

  • リップクリーム

  • コロコロするやつ(髪が抜けるので)

あたり。
電源タップやS字フックなどは家にあるものがそのまま使えそうだった。
USBの充電アダプターはとりあえず手持ちのものを荷物に入れ、後日Amazonで追加購入をした。
Kindleは近日中にセールがありそうだったので、その際に買うことにした。

気が動転していたので、どうせ髪の毛がなくなるのに「半年分必要だから」とシャンプーやコンディショナーの詰め替え用まで荷物に入れてしまった(もちろん後日夫に持ち帰ってもらった)。

食べ納め

抗がん剤治療が始まると、白血球の値が通常よりかなり低くなり、感染症を防ぐため生物が食べられなくなる。
当面食べられないものとして、パッと思いついたのが「寿司」だった。

買い出しから戻ってきた時点で夜8時、近所の寿司屋に駆け込む気力ももはやない(忘れがちだが熱も38度ある)。
そこで夫に宅配の寿司を頼んでもらった。チラシの中で一番高いやつだ。

けれど、既に白血病による感染症が進行していて38度の発熱もしているわたしに寿司を食べ切ることは出来なかった。

離れて暮らす家族と現状について共有する

病院にいるうちに、両親と弟に白血病であることと翌日から入院することを伝えた。
父には自分から電話をかけ、母からは即電話がかかってきた。
父に「白血病なんだって」と言った時、初めて涙が出た。夫が来てもへらへらして見せていたのだが、父と話すとどうしてもだめだった。
父は一瞬黙っていたが、すぐに「分かった、きみは今まで何でも乗り越えてきたし今回も大丈夫だから」と言ってくれた。
母は「何でこの子ばかりこんな試練を受けるのか」と電話の向こうで泣いていた。
弟は「俺に出来ることがあるなら言って」と言ってくれた。大人になった彼をとても頼もしく思った。

わたしは病気=試練とは思わないけれど、世の中に病気や入院をしたことのない人がいることが信じられないというのが正直なところだ。
たぶん彼ら彼女らはわたしたちと違う世界で生きている。
でもいつまでもその世界が交わらないことを良いとも思わないから、元々白血病になる前から思っていたことだけれど、その世界を出来るだけボーダーレスにしていきたいというのがわたしの願いでもある。

夜、準備がひと段落した段階で両親と弟とZOOMをした。
全員「ここまで来たらもう腹を括るしかない」と思っていて、話題は白血病そのものよりも、わたしが肺炎で40度の発熱をし、中学受験をおじゃんにした時のことがメインになった。

今回、このタイミングで休職になることへの精神的ダメージがとても大きかった。
キャリア的には今ノリにノッているのに、生まれつき心臓が悪くて障害者でもこれだけやれるんだ!と世の中に証明してやろうと意気込んでいたのに、それを途中でへし折られて、この先どうなるんだろうと不安だった。
けれど両親は
「中学受験は出来なかったけど、そのお陰で高校受験してあの高校に入れたんだから結果オーライだったじゃないか、今回のことも長い目で見ればいいよ」
と励ましてくれた。
だてに死にかけの娘育ててないなこの人たち、と思った。
夫は「熱38度もあるのによく普通に喋れるね」と驚いていた。

仕事をぶん投げる

勤務先は労働組合の強い会社で、原則22時以降に働くことは出来ない。
でもこの時はそんなこと言っていられなかった。
幸い、異動に備えて作っておいた引き継ぎ書があったため、それを上司とチームメンバーに全力で投げた。
他部署とのチャットに何も言わず乱暴に上司をInviteした。
個別にチャットしていた相手には「すみません急病が見つかったので今後は上司にお願いします」とだけ書いた。
上司は「何も気にしなくて良いから」と言ってくれていたが、本当に何にもしないまま入院することは自分で許せなかった。

仲の良い女性陣、ごく少数の同期には業務用のチャットではなくきちんとLINEで急病が見つかったことを報告した。
絶対に戻ってきてやると思いながら。

高額医療費限度額認定証の申請

日本には、医療費が高額になった際に一定の基準を超えた額について所属の健康保険組合から払戻しを受けられる制度がある。
その存在をちゃんと思い出し、申請することにした。
必要事項を記載した申請書のフォーマットを印刷して健保に郵送する必要があり、この日中に全てを終わらせることは出来ない。
勤務先の健保の申請フォーマットは前時代的で終わっていたが、印刷して郵送すればいいだけの状態になるように必要箇所を埋め、夫に後を託した。

ガン保険の申請

結婚時に夫婦でセコムのガン保険に加入していたため、今回は支払いの対象となることが想定された。
これに関しては、退院後の今も夫に全ての事務手続きを委ねてしまっている。
抗がん剤治療は高額だが、ガン保険に加入していたお陰で我が家が金銭的に行き詰まることはなく、非常に助かった。
(入院中に師長さんから聞いた話だが、金銭的事情から治療を辞退する方が稀にいらっしゃるそうだ)
掛け金は月々数千円だし、がんなんていつ誰がなるか分からない時代なので入ったほうが良い。
幸い、ガン保険の加入にあたって先天性心疾患であることはネックにならなかった。

その他もろもろ

週末に予定していた用事のキャンセル、パーソナルトレーニング、小顔矯正、エステ、ネイルサロンのキャンセル、そして手足のジェルネイルを落とすこと。
深夜になり、体力も底を尽き、熱でぼーっとしながらジェルネイルを落とした。
いつもジェルネイルが取れやすく、しっかりめにつけていただいているため、落とすのはなかなか大変だった。

夫が
「買い出しは俺がやって、先に帰ってもらえば良かったのに気が回らなくてごめん」
と謝っていたが、あの買い出しくらいしか夫と一緒にいられる時間もなかったと思うと、それはそれで良かった。

コロナ禍で面会は全面的に禁止されており、一度入院してしまえば一時退院するまでの間は夫に会えなくなる。
寝るのが惜しかった。



続きます!

maykkzk.hatenablog.jp